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貸主(オーナー)から賃貸借契約更新拒絶の「正当の事由」について (立退き交渉)

借地借家法第28条の「正当の事由」について

執筆者:ひかり総合法律事務所

弁護士 綱藤明


借地借家法第28条は、建物賃貸借契約の更新拒絶等の際には、賃貸人に「正当の事由」が認められることが必要であり、この「正当の事由」が認められるためには、一般的に、建物賃貸人が建物賃借人に対して「財産上の給付」をすることが必要である。

本コラムでは、この「財産上の給付」のうち、実務上頻繁に登場する立退料の算定根拠について取り扱うこととする。

【立退料の算定方法について

立退料の内容としては、主に、①移転経費(引越しに要する費用等)、②営業補償(借家からの移転により営業を廃止あるいは一時的に停止せざるをえなくなることによる営業利益の損失を補償するもの)、③その他、借家人が移転によって長年培ってきた地縁的なつながりを失うことによる精神的な苦痛などが含まれる。


立退料の額については、当事者間に合意があれば当然それによるが、当事者間に合意がない場合には、当該建物に対する双方の必要性の程度等を比較考慮しながらケース・バイ・ケースで決定することになる。一般論には、賃貸人の明渡しの必要性が高ければ高いほど立退料の額は低くなる。また、借家人が当該建物を営業用として利用している場合には、営業利益の喪失分が含まれため、提供される立退料の額も居住用家屋に比べて高くなる傾向がある。以下、居住用家屋と営業用家屋に分けて、立退料算定要素と算定方式を検討することとする。


【居住用家屋の立退料算定要素と算定方式について】

 算定要素としては以下の①~⑤などが考えられる 

① 移転経費(引越代)

② 新規契約金(仲介料・礼金)

③ 前家賃との差額

④ 敷金の差額

⑤ 転居による慰謝料(見舞金)


 算定方式 

立退料の金額は、おおよそ、前述の①、②、③(前家賃との差額の1~2年分であることが多い)、④、⑤(見舞金は10~30万円程度であることが多い)の合計額により決定される。

*実務上は、賃借人の法的知識の欠如に付け込み、数か月の賃料程度の立退料を提供して追い出しを図る例も多い。


【営業用家屋の立退料算定要素と算定方式について】

 算定要素としては以下の①~⑧などが考えられる。これらの合計額が立退料となる 



*営業用家屋の場合には、「営業の種類(業種)」によって立退料が異なる。たとえば、「飲食店」、「美容院」などはその場所に根付いていることが多く、場所の移転により大きな不利益を被るため、前記④の営業補償額が高額になることが多い。

*上記④の営業補償には、営業廃止補償、営業休止補償、営業規模縮小補償がある。なお、営業休止補償には,「収入源の補償」「固定的経費の補償」「従業員に対する休業手当相当額の補償」「得意先損失の補償」などがある(「収入源の補償」とは、店舗の移転に伴い営業を休止している期間について、営業していれば得ることができたであろう収益相当額を補償することである。「固定的経費の補償」と、休業期間中においても必要となる経費の補償である。具体的には、公租公課、電気、ガス、水道、電話等の基本料金、機械器具のリース料、借入利子等をいう。「得意先損失の補償」とは、店舗の休止、移転によって、営業再開後一時的に得意先を喪失し、従前の売上高を得ることができなくなると予測される場合に、低下した売上高が従前と同じ売上高になるまでの売上減少相当分を補償するものである。「移転に伴うその他の費用の補償」とは、商業登記、開店広告、移転通知等に要する費用をいう)。

*上記⑦の工作物補償とは、工作物の移転に伴い生ずる損失に対する補償である。具体的には、(ⅰ)移転可能なものについては、移転に要する費用(撤去費+運搬費+設置費)を補償し(ⅱ)移転困難なものについては、新設に要する費用を補償することになる。

*上記⑧の動産移転補償とは、動産の移転に要する費用である。具体的には、動産の搬送費用である。


以上



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