築地場内が移転して2度目の師走を歩きました
一昨年10月、83年続いた築地市場の場内は豊洲に移転しましたが、主に一般客、観光客を相手に商売をしていた市場場外は築地にそのまま残ってお店を続けています。
プロの卸売りは豊洲市場に移り、小規模の飲食店・小売店、一般客相手のお店は築地に残った格好です。
現在築地に残った場外市場には、鮮魚、生鮮品、乾物、加工食品、お食事処など約460店舗があります。
築地場外市場でにぎわう主な通りは、新大橋通りにある「もんぜき通り」、東側に並行して「築地西通り」「築地中通り」「築地東通り」、それぞれの突き当りを「波除通り」が垂直につなぎます。
▼とにかく混雑のもんぜき通り
まず、築地場外定番の入り口?大通り沿いのもんぜき通りから歩きました。
入口付近から人混みで、なかなか前に進めない状態。
この通りは食べ歩きの店がたくさん軒を並べ、アジアからの観光客らしき方々が、道の端っこの簡易テーブルでカニ、まぐろ、煮こみ、ラーメンなどを家族でのんびり食べています。
お店を見学するというより、立ち止まって食べる通りです。一人で行くなら、この通りは避けた方が賢明かも!
▼数年前老舗ラーメン店から出火して4棟ほど火事になったところ。建て直すのではなく軒先で商売していました。
▼この立食い寿司店だけは一人の方がいいでしょう。
「築地西通りの鳥屋さん」
通りの途中にある築地横丁(ここも道幅が狭いので混んでる)を通り抜け、すしざんまい本店のある築地西通りにたどり着きました。
人混みはやや緩くなりホッとします(土曜日はこの通りも歩けないぐらい混んでいます)が、行列のできてる店が所々に。
食べログなどで情報集めてその店直行!なんでしょうか、行列店と静かな店が対照的です。
ネット情報の怖い現場です。
実際「築地場外市場」で検索すると検索上位は食べ歩きばかり。
この通りには、ネット情報ではあまり紹介されないおススメのお店、「鳥藤(とりとう)」という鴨肉・鳥屋さんがあります。
お店の中に立ち食いコーナーがあって、焼き鳥や鶏がらスープのラーメンが食べられます。
寒かったのでラーメンを注文すると小学低学年のお子さんがカップに具を入れたりして手伝っていました。
ミニどんぶりにサッとゆでた麺、ネギ、とりつくね、鶏肉をのせて、スープをジャーっと入れるだけ簡単ラーメン。でもうまい!
この店には、鍋用冷凍の鴨肉やスープなどを販売していますが、鶏がらスープが大人気です。
売り切れも多いと聞きましたので、見つけたら買い!
▼店内の立食いは午後だけみたいです。
▼とにかく鳥だしスープがおいしいラーメン。
▼大人気の鶏がらスープ(この写真は平日の午後に撮ったものです)。
この通りも次の築地中通りも食べ歩きの店は多いけれど、基本は店内に入っての飲食パターンが多いので、通りもそこそこ歩けます。
「寿司あり酒あり築地東通り」
築地東通りになるとなぜか海鮮丼専門系がなくなり、寿司店が多くなります。
ワイン・日本酒の立ち飲み店やビールの店、韓国食材の店などあって、今までの通りと雰囲気が変わります。
飲食以外の海苔や鰹節、包丁屋さんなどの販売店もありますが、観光客もあまり興味がないらしく、店の前はちらほら。
でも、刃物店の前で包丁を見ていると店員さんがいろんな包丁を握らせてくれます。
用途の違い、扱い方、握り方などていねいに説明してくれました。
意外とこんな店で店員さんのお話するのも場外の楽しみですね。
▼築地東通りは日本酒、ビール、ワイン、抹茶の飲める店が所々にあって和みます。
▼この通りは寿司屋も多く、「鮨國」が一番並んでました。
「車道まであふれる波除通り」
波除通りは、歩道ではあふれて歩けないので車道に当然はみ出すほど賑やか通りです。
とくにテリー伊藤さんの実家である卵焼き「丸武」は人だかりが激しく交通整理も出ていました。
築地のお店といえばテレビや雑誌で必ずといっていいほど登場するので日本人の方が多い感じです。
丸武の右隣でさきいか、明太子、しらすをてんこ盛りで販売している「伊八」も大人気。
▼これでは車は通れません。師走の土曜日です。
▼店員さんがしらすをジャンジャン盛るので、店のご主人が「もうやめて~」と叫んでお客さんの笑いを取っていました。
▼同じ波除通りの人気のパン屋さん「ル・パン」
▼人気はあんこクロワッサン。他にもいろんなクロワッサンが。
「かつての築地市場を楽しめる築地魚河岸」
丸武のある波除通りを南東方向に歩いていると、築地東通り過ぎたあたりの両側に3階建ての建物が見えます。
小田原橋棟(向かって左)、海幸橋棟(右)の2棟で構成する「築地魚河岸」という商業ビル。
両棟の1階は鮮魚店、青果店、水産物店など約60店舗が入った生鮮市場です。
一般の買い物客、観光客が店先で店員さんと話したり、目利き?したりで混雑していました。
築地市場らしい雰囲気と活気を一番実感できるところです。
お店は午後2時半ごろになると閉店準備になります。
なお、早朝5時から9時ごろまではプロの買出し人でにぎわいます。
3階にはバーベキューコーナー、築地場外の名店が入ったフードコーナー、テラスがあり観光客もあまりいないので、築地場外の混雑に疲れたら、のんびりできます。
▼海幸橋棟と小田原橋棟は道路を橋上橋で結ばれています。
▼各店舗はビルの入り口に旬のおすすめをチラシで貼り出していますので、素人でも買い物しやすい。
▼小田原橋棟3階の魚河岸食堂には「鳥藤」も入っています。
▼海幸橋棟の3階にあるバーベキュー広場。
▼魚幸橋棟の3階屋上広場からは広大な築地場内市場跡地が一望出来て壮観、かつての築地市場のスケールを実感できます!
「波除神社があって築地市場がある?」
築地魚河岸ビルから波除通りに戻り南西方向を見れば、約100m先の突き当りに、銀杏の黄葉に飾られた波除神社があります。
築地は名前からも分かるようにもともと埋め立て地です。
江戸時代初期に埋め立てが開始された当時は次々と波に洗われて工事は難航していました。
ところが海中から発見された稲荷神を祀ったところ、風波が和らぎ工事が完了したそうです。
これが波除の由来で、厄除けや航海安全の神様として信仰されています。
また、正面向いて左側には、築地市場に隣接していたところから「海老塚」「すし塚」「玉子塚」など水産物や食品にかかわる霊を祀る塚があります。
▼食べ歩きに疲れた人が鳥居の前でよく写真撮っています。
▼毎日お参りに来る寿司屋のご主人もおられるとか。
▼築地市場との結びつきが深い波除神社です。
「築地のランドマーク、築地KYビル」
築地4丁目交差点、もんぜき通りの対面の角にひときわ目立つ、「築地KYビル」が建っています。
どこかで見たデザインと思ったら、今話題の新国立競技場と同じ隈研吾氏の設計でした(外観だけです)。
木の使い方が特徴なのでわかりやすいですね。
この建物にも、プロ向けの食材や食べ物屋さんが20数店入っています。
2階には、飲食店の他に築地ガイドツアーのインフォメーションコーナー、未経験から最短2カ月でプロの寿司職人になれる!という「東京すしアカデミー」があります。
このアカデミーでは、親子でも楽しめる90分握り放題・食べ放題体験レッスンがあり、プロのインストラクターが握り方を教えてくれます。
このビルを一度出て裏手に回ると1階に「魚河岸三代目 千秋」というがあります。築地市場を舞台にした人気漫画「築地魚河岸三代目」に登場した“小料理店ちあき”を再現した約10席ほどのお店です。
店主は元魚河岸仲卸で、その漫画のアドバイザーをされていた方なので、味はお墨付き!
▼築地KYビルの外観。さすが隈研吾先生、このあたりでは目立ちます。
▼ガラス張りの調理場で外国の方も真剣に魚の捌く練習をしていました。▼「魚河岸三代目 千秋」夜はそれなりのお値段ですが、ランチは1000円~1600円で日替わり丼、マグロ丼他数種類。お手頃です。
築地場外市場は、食べ歩き以外にもいろいろ楽しみがありました。ただしお店の開店時間は、かつての築地市場時代と同じで午後3時くらいまで。お店の後片付けが始まります。
▼昼間歩けないほどの通りだったもんぜき通りも、午後3時ごろはこのとおり。
▼同じ3時ごろに場内で見かけた築地市場名物のターレー。このワンちゃんたちはいつも乗ってやって来るそうです。
築地場外市場をネット検索すると“食べ歩き”の文字がずらりと並ぶように、場外の中心は“食べ歩き”の観光客や一般客で溢れています。
通りのところどころに点在する海苔屋さんや鰹節屋さんなど魚関係の買い物店、活気と賑わいの生鮮市場、お魚料理教室やバーベキューなどのイベントスペース、市場にまつわる神社などお魚食文化の多彩な面が深く感じられるような街でもありました。
場内市場こそ豊洲に移転してしまいましたが、その活気はまったく衰えることなく今も昔も変わらない築地市場は「そこ」にありました。